一番遠い教室にいる俺は、悲しいことに、同じクラスにテニス部がいない。

放課後。天音さんが来たときはすっごく嬉しかった。

デートだったらもっと嬉しかったかなぁ、なんて。

でも、みんなといるのは楽しい。

行き先は自転車で20分から30分の距離にあるスーパーの中にあるファーストフード店。

4時を少し過ぎた頃。

予定では今頃、テニスをしてたハズなんだけどな。

「ここにしよ~?」

誰よりも先に席を見つけた天音さん。無邪気な笑顔を見せる彼女が可愛い。

天音さんが選んだ席は、10人座れる席。

客が空いている時間なので、そこに座ることにした。

「レディファーストということで、どうぞ」

さすが一志。気が利く人だ。

「ありがと」

「どうも」

2人が先に座り、残りの6人も適当に座った。

片側にはマーク、泰稔、一志、智士。

もう片側は夕月さん、天音さん、要、俺。

適当な位置に座った全員は、会話がバラバラだった。

「昨日のアレ見た?」

「あぁ、面白かった」

智士が一志に振った話は、アニメの話。

「進んだ?」

「まだ装備揃えただけ」

マークと泰稔はゲームの話。

「新作のドーナツあるみたいだよ」

「どれどれ~?」

夕月さん、天音さんはドーナツ屋へ行った。

「みんなバラバラだね」

「うん。そうだね」

要の言葉って、単刀直入って感じだなぁ。

「マネージャーの2人って、いつもあんな感じなの?」

「…天音さんは、いつも同じような感じ」

わからなくもない。そんな感じしかしない。

「夕月さんは、部活のときの方が元気かな」

俺から見た普段の夕月さんって、あんまり喋らないイメージしかないかな。

「そうなんだぁ」

「うん。怖いくらいに」

「え?」

怖いくらいって、何?

「厳しい…とか?」

「そうだね」

「へぇ~」

厳しい人って苦手なんだよなぁ。いや、まぁ、得意な人ってどうなのかわかんないけど。

「明日また部活あるはずだから、すぐにわかるよ」

「そうだよね」

厳しいって一言でまとめた言い方だけど、色々あるからね。今は考えなくて良いか。