テニス部3年の引退試合が5月に行われた。

先輩達が引退し、テニス部にはマネージャーの女子2人と、男子部員1人のしかいない。

そこから、俺ら5人が入ることになった。

入部初日とも言える今日、俺は朝から寝坊した。

「やす~。ご飯は~?」

「いい、遅れる」

野口家を出て自転車を漕ぐこと30分。

福岡高校。

先月、図書室で騒いでしまったことを不意に思い出したが、思い出に浸ってる場合ではない。

教室のある棟と、職員室のある棟を繋ぐ廊下。

そこで集合するらしい。

教室の棟に下駄箱があるから、そっちから入るのだが、前には人影が。

「マーク」

呼ばれた男は振り返ると、片手を上げた。

「よう、野口。あと2分だぞ」

「お前って、いっつも時間ギリギリだよな」

とりあえずギリギリとは言え、間に合う時間であることに安心する。

少し歩くと、集合場所の廊下。

集合場所には、横1列で並ぶらしく、一目見て何人いるかがわかる。

手前から、上甲、高須、岩田、部員らしき男、マネージャー2人。

マネージャーは同じクラスだが、部員らしき男は知らない。

そんなことを考える内に、先生が来た。

「今日は、物理室に集合しよう」

先生がそう言うと、みんなで物理室へと向かった。

何かの授業や実験をする訳ではない。ましてや補習でもない。

「部員が入ったということで、説明しよう」

まるで、どこかのアニメで聞いたことあるようなセリフ。

黒板にはすでに何か書かれてあった。

AM8:00集合

AM8:30解散

PM4:00練習

PM7:00集合・解散

簡単な説明だな。

それだけならプリントで良いだろ。

「…という訳で、自己紹介をしよう」

俺が黒板の字を読んでる間に説明したのだとしたら、黒板に書いてあることを読んでおくように、だけとかか?この先生、大丈夫か?

「福岡笑満(エミツ)。テニス部副顧問。名前忘れたら、お仕置きだべぇ~」

この先生、あのアニメが大好きなんだな。

ってか、何て愉快な名前なんだ。

笑いに満ちてる、らしいぞ。

福岡高校の先生ってところもぴったりだ。

「次は君達の番。どうぞ」