放課後。

「テニス部入ろう」

「「は?」」

6人で集まった図書室。

紅祐の発言で大声を出したのは、初耳の3人。

静かに、とでも言うように図書室にいる司書さんが、遠くで口の前に人差し指を当てている。

一斉に6人で頭を下げる。

「あのだな…」

一志は事情を説明する。

その間、テニスに関する雑誌を発見した紅祐は、何冊かを机に置いた。そして、椅子に座ると、パラパラめくって読み始めた。

この学校の図書室は辞書、小説、漫画、雑誌など、色々置いてある。

「理由がアレだけど、俺は良いよ」

野口は紅祐の読み切ったらしい雑誌を同じようにめくる。

「さっすが泰稔。ココが出来てるな」

紅祐は右手をグーにして、自分の左胸を叩く。

要するに、ココっていうのは心。

「理由が理由だけど、まぁ、良いんじゃん?」

「さっすがチャラ男」

賛成意見にも関わらず、酷い言いようだな、紅祐。

チャラ男と言われたのは佐野マーク。日本とフィリピンのハーフらしい。

「チャラくねぇ」

「さっすがハーフ」

野口も会話に乗ってきた。

「バカにすんじゃねぇ」

佐野はいつもこんな感じでいじられる。

「教えてくれんならやる」

オレよりもデカくて、体格が良い上甲は、やる気があるようだ。

「お?やるなら教えるぞ」

「じゃあ、やるか」

上甲は入部を決心した。

「俺はパス。生徒会の仕事あるから」

「えっ?」

紅祐は過剰な反応を見せた。

「瑞紀、やらないのか?何故?」

「今言っただろ」

瑞紀は面倒だと言いたげな顔をしている。

「え~?二次元の幼女と遊ぶ為?」

「それ野口」

「ふざけんなよ」

紅祐、瑞紀、野口の会話に、上甲や佐野も笑っている。

「一志は?一志もやろうよ」

「え?オレ?」

紅祐の急なフリに、驚いてしまうオレ。

「…まぁ、良いけどさ」

「やった~」

紅祐は心底嬉しいように見えた。

ただテニスがしたいんだろうか。それとも…。

何にしろ、普段より更に騒がしい日常が始まるんだろうな。

とりあえず今は、困ってる司書さんの為に、静かにしよう。