県大会予選。ダブルス。

シングルス全員敗退。

残念。でも聞いたところ当然な気がする。

上甲と佐野は初心者。

高須は安全に打ちすぎ。

野口と紅祐は真面目な試合をしてなかったらしい。

俺は昨日の感じ。

勝ち上がるにはまだ力不足。

「今日は2人しかいないね」

今日のダブルスは3ペア全部バラバラ。他の2ヶ所はマネージャーもいるけど、こっちには2人しかいない。

「うん」

「シングルスでバラけるより良いか」

紅祐は先程から呑気な発言しかしない。

俺の緊張を解そうとしてるのか。あるいは自分の。

「あ、試合終わるみたい」

紅祐の視線の先は、俺らの試合するコート。

「そろそろ始まるよ~」

紅祐は元気よく、というより呑気にコートに入る。

「Which?」

「ラフ」

紅祐がラケットを回すと、表向きになった。

「レシーブで」

紅祐も俺も基本的にはオールラウンダーに近い、ベースライナー。要するに後衛派。ひかるが言うには。

なので、俺らは最初のゲームを取りやすいと思われる、レシーブを選ぶ。

紅祐はフォアサイド。俺はバックサイド。

最初にサーブを受けるのは紅祐。

「先制点、思いっきりやるよ」

「うん」

紅祐がハイタッチを求めたので、ちゃんと返す。



相手のサーブ。1球目はフォルト。

多分、初心者だろう。

「セカンっ」

次の球来い。挑発的な意味の言葉を紅祐が送る。相手にプレッシャーを与える為だ。

相手の2球目。遅い球。バウンドした高さはネットより上。

「うぉ~い」

相手の前衛よりも外側、後衛とは逆サイドの角にストロークが入った。

「よしっ」

リターンエース。

喜びに満ちた顔の紅祐とまたハイタッチ。

今度は俺。

やはり2球目が入って、バックハンドレシーブで返す。

紅祐のときとは、紅祐と全く逆のストローク。

リターンエース。

「まるでミラーだね」

紅祐が笑いながらそう言った。



ゲーム中盤。

リターンエースはただプレッシャーを与えるだけの作戦なので、あまり使わなかった。

4-0。