天神学園高等部の奇怪な面々Ⅵ

ジャラン…と、ギターを鳴らした後。

ラビはそれまでとはまるで違う声で、会場に歌を響かせた。

ジョン・レノンの『Stand By Me』。

歌自体は名曲ではあるものの、よく聞くありふれたものだった。

その歌を、歌う。

技巧に走る訳でもなく。

声が美しい訳でもなく。

演奏が特筆すべきものという訳でもない。

むしろその腕前はアマチュアと言っていい。

しかし聴衆は、静寂のままその歌に聞き惚れる。

咳一つする事すら惜しむように。