天神学園高等部の奇怪な面々Ⅵ

ヴァースキが語りかけていたのは、この鬼達にだろうか。

…ルイはその鬼の姿を見ても、それ程驚かない。

人外さえも生徒として在籍しているこの学園では、稀にそういう生徒も存在する。

だが、ルイが驚かない理由はそれではない。

だってあれは…あの鬼は…。

そんな彼女の思考を断ち切るように。

「九頭龍大神は、日本に伝来しても様々な伝説を作っている」

鬼に囲まれたまま、落ち着き払って語るヴァースキ。

「その中の一つに、平城京の九頭龍伝説というのがあってな…発掘された平城京の二条大路木簡には、奈良の南山に住む九頭一尾の大蛇が疫病の原因となる鬼を…」

話の途中のヴァースキに、数匹の鬼が同時に襲い掛かる!

「危ないヴァースキ!」

身を隠している事も忘れ、思わず叫ぶルイ。

その声に振り向く事すらせず、ヴァースキは鬼達の攻撃を、宙に舞い上がってヒラリと回避する。

「食って退治し、都での流行阻止を祈願したとされる文が書かれているのだ」