天神学園高等部の奇怪な面々Ⅵ

やがて遥は舞台の中央に立ち、開演のブザーが鳴る。

演劇部文化祭公演『ロミオとジュリエット』。

観客にとっては待望の舞台の、遥にとっては惨劇の幕が、いよいよ上がった。

幕が上がると。

「……っ……」

物凄い数の観客が、遥の目に入る。

数百人、下手をすれば千人近いだろうか。

天神学園生徒は勿論、学園外の一般の観客も数多い。

最前列に座るVIP席の生徒会長。

彼女がコロコロ笑いつつ、笑っていない盲目の瞳で舞台中央の遥を見つめた。

『天神学園の演劇の舞台で、恥ずかしい演技を見せたらどうなるか…』

その盲目の瞳が細まる…。

『わかっていますよねぇ、皇帝…?』

(ひぃいいぃいぃぃいぃいぃぃっ!)

その圧殺されそうな無言のプレッシャーに、遥は今にも舞台上で失禁してしまいそうだった。