「そういう奈帆こそ、彼氏欲しいとか思わねーの」




ドアノブを掴んだ手が止まった。

背後から飛んできた声に、一瞬、なんて答えればいいのかわからなくなったからだ。


…彼氏?


そんなの欲しいに決まってる。

あたしだってちょっとくらいはノーマルな恋をして、この胸を高鳴らせてみたい。

こんなナルシスト野郎のことなんか一秒も考えなくていいくらい、誰かに夢中になってみたい。


だけど無理だ。


和也が、俺は俺しか愛せないと言い切れるように、あたしも他の誰かに夢中になることなんてないと言い切れる。


夢中にさせてくれる彼氏じゃなくて


「…欲しいよ」


いま、この瞬間も考えている、夢中になっている奴がいい。



「"普通にかっこいい"彼氏ならね」