或る一人の悲しい男の物語


「これでお終い」
 祖母は静かに絵本を閉じた。
「さあ、お休みなさい」
 それを聞いて僕は起き上がった。祖母の細い目が少しだけ開いたのを覚えている。
「なんでこれでお終いなの?お兄ちゃんはどうなったの?」
 どう考えてもこの絵本は続くだろう。どうしてこれからというときにお終いなのか。
 すると頭を撫でて、
「お話はこれで終わってしまっているもの。どうしようもならない。それじゃあ私達で、絵本の続きを考えましょうか」