或る一人の悲しい男の物語


 彼を支えていた、共に神官を倒した者達も牢獄の中へ次々と消えていった。
 そんな中、国王の聖誕祭が、静かに執り行われた。もちろん回りにいるのは抹殺を逃れた者だがいつそのときがくるのか油断ならない。
 乾杯のとき、一人の若者が国王の前に跪き、杯を差し出した。彼は受け取り、眉間に皺を寄せ、匂いを嗅ぎ安心すると高々と掲げ、杯を交わした。
 その時。
 国王の杯が突然床に落ちて大きな音を立てて割れた。
 床に座り込むように体を折った国王の服は、腹部が赤く染まっていた。染み出す血を手で触れ、まるで夢から覚めたように大きく目を見開いて、目の前に立つ青年を見上げる。青年はさっき杯を渡した人間だった。