しかし彼には悩んでいることがあった。彼は神官の右目に縦の線を入れ、瞳を紅く染めた。
それを合図に彼らは神官を傷つけた。縛り上げられ、その場にうずくまる神官にはただ一人の孤独な老人にしか見えなかった。
すると、傷ついた神官が顔を上げ、こう口にした。
「―――お前は、私に似ている―――何かを恐れているんだろう?何かは分からない、背後から少しずつ忍び寄ってくる影にな―――お前は、そして私もだ、否、ここにいるすべての者もだ、運命から逃げることは無い―――決してな―――。ま、私も逃げられなくて、結局はこうやって死ぬ運命なのだ。お前は、いつか、私を殺したことによって後悔することになる―――」
目を大きく見開き、蔑んだような顔を男に向け、
「私は神の声を聞くことができるのだ。すべてわかるぞぉ。お前は未来生まれ変わり、このことによって痛烈な人生を歩むことになる―――しかし死ぬことは出来ない、運命から逃げることは出来ないからな―――何故かって?お前たちは神を裏切ったからだ」
神官は宮殿に響き渡る程に大きな笑い声を上げ、満足したように笑顔になると、勢いよく倒れた。


