希望という名のきみへ


滝の裏から外へ出ると、白夜はわたしを背負い崖を上った。

泉を取り囲む小山に、ミテラの背後から臨むためだ。

幸いなことに月が出ていた。

白夜の大きな手が岩肌を探りながら二人分の身体を支える。

彼が力を込める度に、背中のわたしには大きな筋肉のうねりが伝わってきた。

程なく、わたし達は山の上に出た。

「ミク、俺はミテラを脱出してから二十数年、このテラで生きてきた。

その間、何人もの新人類と愛し合い交わったが生まれた子供は空だけだ。

それだけ種の壁は高い。

お前が生きてここにいることが、どれだけ俺の救いになるかわかるか?」

突撃を目前に、白夜がわたしに向けて語りかけてきたのだ。

「わたしが地球人だからか?」

「そうかも知れぬ。が、それだけでもない」

「わたしは……」

わたしはここに来るべきではなかった、と言い切る勇気が無かった。

この襲撃がわたしの為に起こったと知った今となっては尚更に。

「ミク、兎に角今は生き残ることだけを考えよう。

我々の勝利無しに、泉の存続は有り得ない。

これをお前に渡しておく。

全てが終わったら、俺のことは構わずお前は非難ハッチから下へ飛べ」

白夜がわたしに手渡したのは、シールドスキンだった。

「これは……」

「俺はこの二十年で何人もの新人類を看取った。これは奴らの残したものだ。

ウォークアラウンドで身を守る為にはこのシールドスキンが不可欠だが、ミテラで育った俺らにはこのシールドスキンは作れない。

俺とお前は、彼らの意志を受け継ぎ生き延びるのだ」

わたしは白夜の力強い声に頷いた。

そうだ、空と泉を守る為、わたしは命を賭けて故郷ミテラを破壊する。


何処へ向かうかわからぬ、不遇の未来の為に。