そんな思いを巡らす中、大地に風が近づいて行くのが見えた。
大地が風に気付き、顔を上げた。
その顔に光が射したように笑顔が生まれた。
大地は跳ねるように立ち上がり、風に駆け寄って抱き着いた。
だが、そんな小さな大地の手は、風によって直ぐに振り払われた。
「我ら新人類には子を育てるという習慣がない。
産み落とした子は泉によって育てられるのが常なのだ。滋養を与えられるだけでなく、波動を通して地球の意思を伝えられる。
我ら新人類は生まれながらにして地球の一部として生きることを学ぶ。
だが、地球人である大地は泉の声を聞くことができない」
大地は、孤立しているのだ。
――それは今のお前と同じだろう?
永遠の心は押しつけではなく理解だった。
それが伝わってくるだけに、反論することはできなかった。
「だからダイチの父親であるハクが定期的に泉に通い、あの子と対話をもっている」
「ハク」
「ハクの話はフウから聞いただろう。彼はお前と同じ地球人だ。違うのは彼が男だということだ」
「ミテラでは、男性の存在を知らされてはいなかった」
わたしの言葉には多少の棘が残っていた。
それはまだ見ぬ者への不信と不安。
白夜の存在は、わたしの常識を覆す異物であったのだ。