「ミク、そんなに汁を口の周りに付けたままじゃ、虫に食われるぞ」
意地悪く永遠に指摘され、わたしは慌てて泉の水で口元を洗った。
「そうだ、それでいい……」
そして再びわたしは、永遠に口を塞がれた。
「なっ……、もう綺麗に洗った筈だ……」
戸惑うわたしに構うことなく、永遠の腕がわたしに伸びてくる。
「ミク、これは古の愛情表現だ。
遥か昔、我らの祖先が地球上で育んできた……」
スキンスーツを脱いだわたしの肌に、永遠の体温が直に伝わる。
熱気を帯びた手が、わたしの腰を抱き寄せ、永遠の唇はさらに激しくわたしを求めていた。
――これが抱擁というものなのか?
いや、接吻というものなのかもしれない。
確か、ミテラの図書室で読んだ古の書物の中に、そういう表現が載っていた。
今まで知識でしか知らなかった本来のテラの姿。
テラと共にあった地球人の姿。
ミテラの外へ出た今、それが体現され、実感となってわたしを襲う。


