「その不法入国者、自分は魔術を使えると言っているそうです」
ピタリ。
ついにジンの手はとまり、紅い瞳がレインを睨む。
魔術は、白にしても黒にしても今や禁術。
皇帝の許可証を持たない魔術師は取り締まらなければならない。
魔術師取り締まりの管轄は、紛れもなく第七部隊である。
「すぐに行く。
支度をするからそこで待ってろ」
「は」
ジンは掛けてあった黒い団服に腕を通し、両手に黒い革手袋をはめる。
指の部分が露になっているタイプのものだ。
炎を扱う魔術師の彼には、書類処理以外の仕事に必須アイテムである。
ついでに鞘に収まった細身の西洋剣も腰に携えた。
此方は騎士団としての携帯用品。
書斎のドアの外で待っていたレインを連れ、ジン・アイヴァンスは第六部隊の隊舎へと向かった。