泣きたい。 哭きたい。 なきたい。 涙が流れる気配はない。 そういえば、最後に泣いたのいつだっけ。 確かに泣いた気はするのに。 ───…風が吹いた。 「…泣かないで」 えっ? 誰も居ないと思っていたのに。 いや、ここへ来た時、誰もいなかった。 「…だれ?」 振り返った先にいた煌めくような蒼に、不覚にも目を奪われた。 このときの風は、夏の香り。