【短編】棘のない薔薇





俺たちが出会ったのは、ちょうど長い夏休みが開けた直後のことだ。


うだるような暑さはどこかへ消え失せ、代わりにサラサラと渇いた風が吹いていた。


いつものように彗と美咲の三人で昼食を食べ、いつもの時間を過ごしていた。


…そう、あの声を聞くまでは。




『笹本くん?』




帰宅しようと彗と美咲の教室へ向かっていた俺は、その声に立ち止まる。


誰だよ、また告白か?


舌打ちしそうになるのをかろうじて堪え、ゆっくりと振り返った。


“告白だったら、こっぴどくフッてやろう。”


そう心に決めて。




『コレ。白石さんに渡しておいてくれる?』




純粋に驚いた。


告白目的に引き留めてきた女子生徒だとばかり思っていた俺は、目の前に立っていた人物に目を丸くする。