Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~

一般家庭ならここで残念だったねと笑い話になるところだが、サラの場合はそうはいかない。

子供ながらに、大好きな番組を変えられたという怒りは憎しみに変わる。

サラの両眼が憎しみを伴い変化を───。

しようとして視界を阻まれた。

モリーはサラの両眼を優しく塞ぎながら、なだめるように言う。

モリー「ダメよ。番組を変えられたぐらいで人を憎んではダメ。
……さ、もう学校に行く準備をしなさい。始業式から遅刻するなんて冗談じゃないわよ」

サラ「……ハイ。ママ」

母親の心を感じ取ったのか、先程の憎しみは全て振り切ったといわんばかりにサラは笑顔で返事する。

サラは学校に行く準備を、モリーはその手伝いをしにリビングから去って行った。

モリーはテレビを消したが、画面の向こうでは、首の無いキャスターがいて、しばらくお待ち下さい というテロップが流れていた。



筆記用具に肩からかけられるハンドバッグ。
カリフォルニアでも特殊な制服必須、帽子付きの学校は歩いて十五分のところにある。

モリー「忘れ物はないわね?」

サラ「うん。行ってきます!」

外は快晴。

始業式ということで新たに始まる学校生活に期待が高まり、自然と足はスキップを刻みだす。

学校から家までの半分の距離にある大橋をサラは渡っていた。
陽気なスキップのリズムは変わることなく続いている。

ふと大橋の反対側を見ると女の子がやってくる。

奇妙なことにサラと同じような格好で、同じ学校の制服を着ている。
歳もサラと同い年くらいか。顔は帽子で隠れている。

二人の距離が近くなる。

二人が擦れ違う。   

擦れ違う時奇妙な感じを覚えたサラだが、気にしないことにして先を急いだ。





サラが学校に着いたころ、モリーは家事を全て済ませ、休憩タイムへ突入していた。