Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~

戸惑う男。
しかし今の現実は無視できない。

迷いはない。

あの男はママを傷つけた。

許せない。
許してはいけない。

憎しみが沸き上がる。
瞳が変化し、およそ瞳とはいえないほどまがまがしい模様へと変わる。
鮮血が走る。

生々しく飛び散る血潮は噴水の水のように勢いよく男の体から吹き出し、側にいた母親はモロにそれを浴びた。

男は頭と胴体の二つに別れ、仰向けに倒れ伏した。

一時呆然としていた母親だが、ドアの外に自分がいると、自分の仕業であると気付き、血相を変えてドアに迫ってくる。

───怒られる!

そう思い急いでドアから離れるが、母親のほうが早かった。

怒られることを覚悟して目を力強くつぶった自分が目を開けた時、母親の腕の中にいた。

母親は涙で頬を濡らしながら懇願するかのようにしきりに自分に謝っていた。

「ゴメンね……サラ……ゴメンね……」

何故謝られるのかわからない。

わからないけれど、抱きしめられたのが少しだけ嬉しかった。

母親越しに死に絶えた男が見える。
いつの間にか涙を流している自分と、自分が取り返しのつかない事をしてしまったということに気付いた。



───あぁ、自分は、父親を殺したのだ。