しかしよく見てみると広場に集まった子供達が石つぶや棒きれを投げている先には一人の白いワンピースを着た少女がいる。

前髪と顔はいまや泥だらけになった黒髪に覆い隠されており、ワンピースから見える肌にはいくつか青紫色の痣があった。

その少女は弱々しくも懸命に自分目掛けて飛んでくる物を避けようとしているようだ。

いじめられているのは明らかだった。いじめっ子の一人が叫ぶ。

「お前、知ってるぞ!化け物なんだろ!?」

少女がか細い声で「やめてよぉ」と言ったがいじめっ子達には聞こえなかったようだ。否、聞こうともしていない。

別のいじめっ子が叫ぶ。

「俺達の街から出ていけ化け物!」

言って投げた拳ほどの石が少女の頭に当たる。
いじめっ子側からは歓声があがる。強いて言えばいじめっ子の中には男の子だけでなく女の子もいた。

少女の頭から鮮血が流れる。化け物でも血は赤いんだといじめっ子達がはやしたてる。

その時、少女がわずかに顔を上げた。
汚れた黒髪の隙間から石を投げたいじめっ子を見ている。その眼には憎しみがこもっているようにみえた。

風船が割れたような音がして、石を投げたいじめっ子が頭から二つに裂けた。
何が起こったか一瞬理解できなかったいじめっ子達は呆気にとられて裂けた子が地面に崩れるのを見届けた。

今度は群衆の真ん中にいた子供が弾けた。

そして歓声はすぐさま断末魔へと変わる。
そこから先は虐殺と言ってもいい。いや、何が起きているのかも全くわからない地獄だった。
わからなくとも死ぬと直感したいじめっ子達は散りぢりになり、一刻も早くその場から逃げだした。



一分後、一人残らず逃げ出したいじめっ子達は、一人残らず破裂した。