男は呆れたのとしまったという焦りが混ざった複雑な顔をしながら椅子に腰掛けた。

男「ふぅ……さてと、自己紹介がまだだったね。俺はハリー。ハリー・クルーガー」

サラ「私はサラ。サラ・フィーラスよ」

ハリー「そうか。よろしく。ところでサラ。君はどうしてあんな所にいたんだ?」

サラ「……」

ハリー「あ、無理に言わなくてもいいんだ。過去のことなんて他人に話せることばかりじゃないし」

サラ「……ううん。聞いて」

サラは今までに自分に起きた出来事を全てハリーに話した。
聞いているハリーは真剣そのもので、サラの言葉を一言一句逃すまいとしていた。

サラ「……これが私の今までの生活。……信じられないかもしれないけど……」

ハリー「……信じるよ」

サラ「え?だって……」

ハリーの言葉に耳を疑う。

今、「信じる」と?
こんな嘘みたいな常識離れした話を?

ハリー「少なくとも、君のその真剣な話し方からして作り話とは思えない。ただ、いまいちピンとこないのが君の眼だ。君は本当に憎しみだけで人を殺せるのか?」

やはりにわかには信じられないか。特にこの眼は。

サラは目の前のテーブルの上にあるコップを見つけ、手に取って見せた。

ハリー「?」

サラの行動にキョトンとするハリー。

サラ「見てて」

サラはコップを突き出し、ハリーによく見えるように掲げた。

次の瞬間、コップは木っ端微塵に割れた。

ハリー「あ…………ぁ……」