Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~

缶コーヒーを反射的に受け取りながらサラは男に問い掛ける。

サラ「どうして……?」

自分の分の缶コーヒーのフタを開けながら、男は照れ臭そうに答えた。

「あ、いや……こんな寒空の下で、女の子が一人震えているのを見過ごすっていうのは、何ていうか……目覚め悪いから……」

どこまでお人好しなんだこの人はとア然としていると。

「ホラホラ、そんな格好してないで、あったかくして」

言って男は、自ら着ていたコートをサラの背中越しに羽織らせた。

「じゃ俺もう行くから」

そう言って男は今度こそ去って行った。
男がくれた缶コーヒーとコートは本当に暖かく、男の優しさをそのまま表したようで、涙まで出てきた。

サラ〔このままだと彼は行ってしまう……。そしたらもう二度と会えないかもしれない……本当にそれでいいの?
……今ならまだ間に合う……呼び止めよう、彼を!〕

「「あの!」」

呼び止めた声は一つではなかった。
去ったと思われた男はその実、どこにも行っておらず、建物の隙間から飛び出したサラとばったりと二回目の再会を果たした。

サラ「え?何?」

「あ、いや、あの……もし行くあてがないんだったら、ウチに住み込む、なんてのはどうかな~なんて……ハハ、やっぱ今のナシってこと───」

サラ「私も!」

「え?」

サラ「私も今住み込んでいいか聞こうとした……」

「え?あ……ホントに!?いや、君が嫌じゃなければ……」

サラ「嫌じゃない!」

「え……じゃあ……一緒に行く?」