Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~

~ストックトン裏通り~



モリーが死んだ日からサラは、あてもなくさまよい続けた。
孤児として警察に引き取られることも考えたが、父親殺しのこともあり、警察と関わらないようにすると、モリーの遺体の受取人になることもできず、必然的に家と母親の遺体を見捨てるこになったのは胸が裂ける思いだった。
捜査は迷宮入りとなり、居心地のよかった家も、よく知りもしない父親の借金のカタに差し押さえられた。
サラは、家を出る際に家中のお金を持って出たが、そのお金も尽きようとしていた。
サラは生き抜くために鼠などを獲って食べ、雨を飲んで過ごした。
当然、着替えなどはなく、家を出る時に着ていた白いリボン付きのワンピースは、今やあちこち穴だらけで薄汚れていた。

そうして生活とは程遠い暮らしを続け、気がつくと、人通りの少ないストックトンの裏通りを歩いていた。
そこで建物と建物の間にある狭い通路を居場所とした。そして道行く人に物乞いするような孤児となっていた。本当にサラには何も無かったのだ。
……いや、正確に言えば一つだけ頼りとなるものがあった。
現在サラの所持金は、家を出る時に持ってきた五十二ドル三セントだったが、ここ一週間で六万五千ドルにも及んでいた。

さて、今日も物乞いをする時間になった。
早速道行く人々に物乞いするサラだが、皆汚い物を見る目で相手にしようとしない。

でもいいのだ。

夜になれば……。

夜になり、人通りの少なくなったストックトン裏通りを、一人の女性が歩いて来た。
革ジャンに短いタイトのスカート。肩からさげているバッグはどう見てもブランド物。
今でいうイケテるOLというやつだ。
いつものように飛び出して物乞いをするが、案の定、気味悪がられ、掴んだ両手は振り払われた。
しかしOLが背を向け去ろうとした時───OLは、上半身と下半身に分かれ絶命し、地面に倒れ伏した。

そう、サラにはこの"眼"があった。
未だ謎に包まれる眼だが、皮肉にも、サラ自身が一番毛嫌いしている眼が、今のサラの命を取り留めていた。