Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~

パシャッ、と鑑識のカメラのフラッシュが光る。
夜のカリフォルニアのある一軒家に四・五台のパトカーが集まり、一軒家の周りは野次馬こそいなかったが、警官だらけだった。

「一体何なんスかねぇ?この遺体は」

若い刑事に続いて年輩の刑事が呟く。

「ああ。俺も長いこと刑事やってるが、こんな遺体見たことねえよ」

「争った形跡も遺書もなし。外傷も臓器の破損もなし。寿命で死ぬほどの歳でもないし、薬物反応も出なかった。
今生きていても何の不思議もないのに、この人は死んでいるんです。まるで、魂をそのまま取り除かれたかのように───」

「ガイシャの身元は?」

「氏名はモリー・フィーラス。四十二歳。八歳の娘であるサラ・フィーラスと二人暮らしです」

「父親は?」

「それが妙なことに、娘のサラ・フィーラスが生まれた八年前から行方不明になっています」

「何!?娘の方は?」

「それが……昨日から行方不明になっています。
しかもこの家、父親の借金とかで差し押さえられるらしくって……」

「どーなってんだこの家族は……」

「それと、もう一つ気になるのが……何なんスかね?"あれ"」

「ああ。俺も気になるんだよな"あれ"」

二人の刑事の視線の先には、この家の住人の食事用のテーブルに乗っている、食い散らかされたケーキと水で濡れたパスタがあった。