ガラガラガラガラガラガラ……。


乾いた音が夜の病院に響き渡る。
ここアメリカ・カリフォルニア州の中央に佇むヴァゼロット病院に一人の妊婦が運び込まれた。

ついさっき緊急で呼び出された医師や看護師達が、キャスター付きのベッドで運ばれる妊婦を取り囲むように移動している。

「急いで運んで!急いで!」

叫ぶ医師の一人に看護師が言う。

「先生!既に出血が始まっています!」

「他に異常は?」

別の医師が看護師に問う。

「ありません!」   

「カール先生はまだか!?」

最初の医師が声を張り上げたすぐ後にまた別の医師が答える。

「まもなく来られます」

「はい!どいてどいて!道をあけて!」

伽藍とした手術室に一同が入っていく。
電気を点けても深夜に近い手術室はそれでも薄暗かった。

「よーし、出てくるぞ……」

ようやく出産まで間近となる。
胎児は逆子だったが、現代の医術では何ら問題はない。

不意に、胎児を取り出そうとした医師が異変に気付いた。

「こ、これは……!」

「何てことだ……!」

「検査の時レントゲンには映ってなかったはずだ!!」

出産の場に居合わせた全員の顔が蒼白となり、汗が浮かぶ。

「機械の故障か何かろう。と、とにかく今は、出産させてあげよう……よっ……と」

医師が胎児を取り出す。
この世に生まれたばかりの命が今、開花した、はずだった。

「おい、泣かないぞ?」