あなたは人と違います。
あなたは素敵な方です。
あなたを愛しています。

昭和初期、日本。

最初にあなたに出会った時は、わたしはあなたを嫌いでした。
意地悪だった。わたしをからかいましたね。

「君、小さいね。」
まーさんの最初の言葉です。
まーさんは背が高い。二重でキリッとした目にスッと鼻筋が通った鼻。黒いハットを被ってスーツを着てステッキを持っている。
第一印象、わたしの理想。
でもまーさんは意地悪を言う。ひどい人だと思いました。

あの日わたしは出来たばかりのデパートに本を探しに行きました。
辺りは嬉しくてはしゃいでいる子供や、若いカップルでいっぱいでした。
本屋さんに着きました。目当ての本を見つけたのですが高いところにあるので、わたしは背が低いですから、取ろうとしても取れません。どうしましょう。
しばらく考え込んでいました。
「君、小さいね。」
誰かに話し掛けられました。きっと変わった人なんでしょう。しばらく無視しました。
「じゃあ僕が。」
本をとってくれました。なんなんでしょう。腹が立ちました。
「あなたいきなり“小さいね”ってなんなんですか!?」
「かわいらしかったので言ってみただけです。僕背が高いんで。ほら。」
そう言って本を手渡された。からかってます。
「あっ、ありがとうございます。」
一応お礼を言いました。
「あなた名前は?」
「永井百合子ですけど。」
「じゃあ百合子でいいですね。僕は真嶋健一郎です。まーさんでいいです。」
勝手に話を進められて困りました。
「こんな所で話さないで喫茶店にでも行きましょう。ほら、買ってきて。待ってるから。」
「はっはい。」
わたしは言われるがまま動いた。