嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-



私は売店横の公衆電話で

ダイちゃんからもらった100円玉を入れた。



既に診察や受け付けが終了している院内は、

薄暗く非常灯だけが
ぼんやりと照らされていた。



お父さんのケータイ番号を押し、

♪プルルルル…… 

プルルルル……と、

呼び出し音が鳴るが電話に出ない。



公衆電話だから出ないのだろうか。



10回目の呼び出し音が鳴った時、

「はい」と無愛想な声が聞こえた。



「お父さん?今、どこ??」



電話の向こうは、
懐メロらしきカラオケの音が聞こえる。



「お父さん!!聞こえる??」



「何だ?!」



面倒くさそうに答えるお父さんに、

受話器を握る手に力が入る。



「健太が……、
健太が救急車で運ばれたの!

お父さんが突き飛ばして、
怪我させたからだよ!!」



静かな院内で
私の声が響き渡った。



「……そっか。

今、何て言う病院だ?」



平然と答えるお父さんに
病院名を伝えると、

「分かった」と言って、電話は切られた。