嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-



「葵!!

家の鍵かけて、
一緒に行くぞ!!!」



ダイちゃんに背中を叩かれ、
我に返り、
家の鍵をかけた。


階段を駆け下り、
近所の野次馬の視線を避けるように

救急車に乗り込んだ。



騒がしいサイレン音が
鳴り出すと、

救急車は団地内を抜け、
見慣れた道を猛スピードで走って行く。



意識が無くなっている健太の腕には、
点滴の針が射され、

頭には応急用の包帯が巻かれた。



「弟は大丈夫なんですか?!」



不安が募り、
救急隊の看護師さんに尋ねる。



「頭を打っていますからね。
精密検査をしてみないと。

でも救急車を呼んだのは正解だったよ。

大人がいないのに偉かったね。

お父さんとお母さんはどうしたの??」



……お父さん。



“ツバ付けておけば治る”



テキトーな言葉を発して出て行ったお父さん。


もうお父さんの顔なんて見たくない。



「うちは母がいません。

父はどこにいるか分かりません……」



「そう?
お父さん、ケータイ持ってないの??」



「……あります」



「じゃ、病院に着いたら電話をかけようか??」



優しく言葉をかける看護師に黙って頷いた。