嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-



体をビクッとさせる健太と

目を大きく開け
こちらを見ているお父さん。



いつもだったら
「ごめん!!」と言えるのに、
言葉も出て来ない。


黙って鍋を拾い上げ、
何事もなかったように食事の支度を始めた。



「おい!!!葵!!!」



お父さんの怒鳴り声がして、体が硬直した。



「仕事はやってもらうからな!!!!!」



やっぱりそうだ。


そうなるんだ。


嫌がってもやらなくちゃいけないんだ。



その時、


“イヤなことはイヤって言わないと”


ダイちゃんの言葉が頭を過ぎる。



私は振り返り、
寝転んでいるお父さんに声をあげた。



「私、やっぱりヤダ!!!

もうあんなことしたくない!!」



その声に反応したお父さんは
ヌクっと起き上がり、

こちらにやって来ると

私の髪の毛を鷲掴みにした。



「お前は
どうしてワガママを言うんだ!!

俺はお前たちのために

ずっと働いてきたんだ!!」



眉間にシワを寄せ、

鬼のような顔で
怒りに満ちたお父さんは

私の頭をシンクの中に突っ込んだ。


そして蛇口をひねり、

ジャーと冷水をかけ始めた。