約束の土曜日。


お父さんと電車を乗り継ぎ、

新宿へやってきた。



空を見上げると、
大きなビルが立ち並び、

せっかくの青空が狭く感じた。


その押し潰されそうな感覚が、

今の私のように感じた。



お父さんとは家を出てから、

一言も口を利いていない。


電車の中でも、

眉間にシワを寄せ、
黙ったまま下を向いていた。



駅から少し離れた
雑居ビルにたどり着くと、

指がプルプルと震え出し、

足がすくんでしまった。



「おい、早く来い」



小さなエレベーターに乗り込んだお父さんが、

立ち尽す私に声をかけた。



カツカツと靴のつま先を
エレベーターの中で、
ぶつけるお父さんは確実にイラついている。



「葵!!
何やってるんだ!!

早く乗れ!」



怒鳴り声が上がった。



狭い空間に木霊する声に、

私は一歩踏み込み、

エレベーターの中に足を進めた。


ウイーンと
動き出すエレベーターと共に、

心臓がはち切れるほどの緊張が走る。