「いただきます……」



箸を進める二人を見ながら、
私もご飯を口にした。



「……あのよぉ?葵」



お父さんが
箸とお茶碗を持っている手を
ゆっくりと下げ、口を開いた。



「どうしたの?」



「お前、仕事してくれないか??」



「えっ?仕事?新聞配達とか?」



中学生の出来るバイトは
それぐらいしかない。




「さっき来た、
緒川さんと仕事をしてほしんだ」



緒川さんと仕事?


どういうこと?



私は箸を置き、
姿勢を正すと

「仕事って
どんなことするの?」と尋ねた。



すると、
お父さんは後ろに手を回し、

ピンク色の封筒を
テーブルの上に置いた。


そして中に入っている
サインと判の押された薄っぺらい紙を取り出した。



その紙を手にして
文面に目を通すと、

“契約書”という文字に目が留まった。



でも難しい漢字がいっぱいで
意味までは解らない。



「さっき、緒川さんと契約したものだ」



「……うん」



「お前が仕事をするための契約だ」




お父さんの言っていることが、
未だに理解出来ない私は、

その契約書をじっと眺めた。



すると更に封筒から
A4サイズの数枚のプリントを取り出し、

私の前に置いた。



え?!



大きく目を見開き、お父さんに視線を戻す。