4月の風が吹き、

柔らかな髪がフワッと浮いた。



真新しい制服に
身を包んだ女の子が
母親と笑みを浮かべる通学路を

私は一人歩いていた。



ヒラヒラと
舞い落ちる桜の花びらに

視線を落とす。



私、小阪葵(コサカアオイ)は

今日、横浜の高校に入学する。


背は162㎝と比較的大きく、

色白の肌に

クリクリした瞳と
高い鼻は、

母親に譲りだと言われていた。



数ヶ月前、

私と6歳下の健太は
この街に引っ越してきた。



私たちには親がいない。



児童養護施設という親の居ない子どもが

生活をする場所に処置されたのだ。



普通なら
悲しい話なのに、

決してそんなことは無かった。



どうしてなのか……。



それは二年前に遡(サカノボ)る。