『一人で生きていける人間なんていない。特に彼女は…だから…』


"傍にいてあげて欲しい"


憐さんはもう一度、そう言った。


『俺は…知りたいんです』


しばらく考え込んでいた夏がぽつりと呟く。


『字祢の事が知りたい。
俺は、字祢の力を恐いとは思わない。だから…字祢を遠ざけるなんてしない…というより出来ない』


夏は決して迷う事なくそう告げる。


『板倉君……』


憐さんは嬉しそうな笑みを浮かべた。


『本当なら…君も、糸雨ちゃんも事件には巻き込むべきでは無い…分かってはいるんだ』


憐さんは悲しげに瞼を伏せる。


『形梨さん……』

『でも…彼女の力が俺達には必要だった。
彼女の力は沢山の人間を救える、言わば希望なんだ』


希望…私にとっては絶望でしかなかったのに…?


『糸雨ちゃんは知らない。その力がどれだけの人間を救えるのか…』


憐さんの言葉がスッと私の中へと入ってくる。