「…私には出来ない……
あなたが羨ましい…」


「…え……?」


小さく呟いた私の声はきっと夏には聞こえなかっただろうな。


私は夏に傘を押し付け雨の中へと駆け出した。


「お、おい!!!!?」


後ろで夏が何かを叫んでいたけれどそのまま走る。


雨に濡れるのも気にならなかった。


気付いたら溢れていた涙を隠す事が出来たからだ。


―パシャッ、パシャッ


水溜まりを避ける事無く走り、帰路についた。