コンコン。 コーヒーをトレイに乗せて部屋をノックした。 「…あ、ありがとう」 香織さんがソファーから私を見て微笑んだ。 私は悠斗を見て目を見開いた。 その手に抱えているのは… ………バイオリン…。 ……弾いて聞かせたの? 香織さんに……。 お義父様が結婚式の時に私にそっと耳打ちした言葉が蘇る。 『悠斗は百合子さんの前でだけしか弾かないよ。 過去も全て託したい相手の前でしか。 私にも聴かせて欲しいと、いつか伝えて下さい』