俺は百合子を庇うように前に歩み寄るとジョセフに言った。
「すまない、彼女は英語を話せないんだ。
…悪いな、お先に失礼するよ」
百合子の手をしっかり引いて建物へと歩き出す。
ジョセフは差し出した手を引いてキロリと俺を睨んだ。
…彼は今回の企業買収の競い相手だ。
当方が優勢のため、俺を快く思っていない。
……嫌なヤツがいたな…。
しかも百合子をあんな目で見るとは…。
気を付けないと…。
「悠斗?今の方に私、挨拶しなくて良かったの?
何て言っていたの?」
「…しなくていい!」
つい大きな声で言ってしまう。
「ご…、ごめんなさい。
…そうよね、私なんかは黙っていた方がいいわね…」

