「じゃあ、行って来る」
玄関で、靴を履きながら言う。
キユは枕を抱きしめたまま、
黙って俯いていた。
昨日お土産を要求した姿はもう無い。
「なに、ふて腐れてんだよ
たった二日だろ、すぐ帰るって」
「・・・・」
「おーいー」
頭をぐしゃぐしゃに撫でると、
やっと「んー」と声が出た。
「俺が居ないからって
家事サボんなよ、家政婦さん」
「分かってるし」
口を尖らせて言ったキユに
小さく笑って、俺は家を出た。
扉が閉まるほんの数秒前に見えた
キユの淋しそうな顔が、
新幹線に乗っても頭から離れなかった。

