「水瀬ー」



「うるさい」



「水瀬ー!」



さっきからしつこく俺の名前を

連呼する釣瓶にちっと舌打ちする。



「なんだよ30秒で済ませろ」


「優里香が・・・優里香が、

俺の優里香が、別れようってっ

そんで俺は

「はい30秒」」



「最後まで聞いてよ水瀬~!」



嘆く釣瓶を無視して

俺はパソコンに視線を戻した。


今日は残業なんてしてられない。




8時にはキユを迎えに行かなければ。





「何急いでんだよー

あ、今日飯行かない?話聞いて」


「先約があんだよ」


「ちぇーつれない男」



釣瓶はつまんなさそうに

そう言ってデスクに戻った。




あの男の恋愛相談なんか

誰が好き好んで聞くんだろうか。

俺にはとうてい無理だな。




「じゃ俺先あがるわ」


「はいはいごゆっくり~」