「一回ちゃんと

考えた方が良いんじゃないか」




「・・・いい」


「は?」






「シュンは何も知らないんだよ、

あの人がどんな人なのか。


多分それも嘘だから、忘れて。」





キユが「それも」と言ったのを

俺は聞き逃さなかった。





「・・・何かあったのか?」




だから、聞かずには居れなかった。





「捨てられたんだよ、あたし。

・・・金の為にね。」




重い空気を掻き消すかのように

キユはそれだけ言って、

笑いながら洗面所へ消えた。






捨てられた、って・・・