目の前が真っ暗になった。
めまいがした。
人をかき分けて救急車の近くまで行ったのをぼんやり覚えている。
植え込みも越えて、車が歩道に突っ込んでいるのが見える。
タンカーに乗せられて応急手当を受けているのは紛れも無く美佐子だった。
「美佐子!」
狂ったように叫んだ。
「美佐子!」
それからどういう経由でそうなったか覚えていないが、僕も救急車に乗って病院へ向かった。
美佐子は集中治療室に入っていった。
それから、椅子に座ってひたすらに待った。
1分1分が恐ろしく長く、時間が過ぎるのがとても遅く感じた。
何時間かして、美佐子の両親が来た。
「祐次君!」
「…おかあさん」
「美佐子は、美佐子は…!」
美佐子のお母さんは涙をぼろぼろ流しながら"美佐子は"と繰り返した。
お父さんは、眉間にしわを寄せて立っていたが、しばらくするとお母さんの肩をそっと抱いていた。
それからどれ位経ったのか、医者が出てきた。
「非常に厳しい状態です。最善は尽くしました」
美佐子は病室に移った。
