時空をこえて、愛。

「ありがとうは僕の台詞。美佐子、ありがとう」


家に着いて、また深くキスをした。
ずっと一緒にいようと誓った。

目の前がぼやけていく。
戻る時が来たんだと感じた。

美佐子の感触が離れていく。







…薄暗い、そう思った。
そしてふと目を開けた。

目の前には僕の手を握る人。
少し老けたけど、よりきれいになったと思わせる美佐子の姿が。

「祐次…!」

美佐子はかすれた声で僕の名を呼んだ。

「泣かないで」

そう言いたいのに声が出ない。

「ごめんね。私、泣かないから」

美佐子が涙を拭きながらにっこり笑う。

「美佐子、愛してる」

口だけゆっくりそう動かす。

「私も愛してるよ」





最後に良い旅が出来た。

美佐子に会えた。



最後の力を振り絞って言った。

「美佐子、ありがとう」


「それは私の、台詞…」







12月23日、祐次永眠。

事故死だった。