目が覚めると、真っ白な、見覚えのない天井が目に入った。
「気がついた?」
やさしくそう問いかける声に首を傾けると、母親がぼくを覗き込んでいた。
「え、ここは・・・?」
「病院よ。まったく心配掛けて」
「病院?」
「そうよ、覚えてないの? あなた、食中毒で運ばれたのよ。おまけにそのあとひどい高熱が出て・・・まったく、大変だったんだから。三日もうなされてたのよ。かあさんほんとに心配したんだからね」
「食中毒?」
ああ、そうか。
静流の、舌。

静流? 

・・・三日!?

ぼくは飛び起きると、布団を跳ね上げた。
腕には点滴の針が刺さっていた。
チューブを掴んで、それを無理やり引き抜く。
「ちょ、ちょっと、なにやってんのよっ」
慌てる母親に構わず、ベッドから降りようとして、自分が寝巻きのようなものを着せられていることに気づく。
「かあさん、着替えだして、急いでっ!」
そう言ってベッドから飛び降りる。
と、膝に力が入らず、床に倒れてしまった。
「ほら、なに馬鹿なことやってんの。ずっと寝てたんだから、急に動けるわけないでしょ」
助けようと差し伸べてくる手を振り払い、ベッドにつかまって何とか立ち上がる。