ようやく机に齧り付いての作文地獄から解き放たれ、肩をゴキゴキ鳴らしながら教室を出る龍太郎。

その後ろを龍娘が続く。

「それにしても補習に反省文に…お前は碌に夏休みを満喫していないな、丹下」

呆れたように言う龍娘。

「そう思うんなら大目に見てくれよ、先生。俺だって好きで夏休み返上してる訳じゃねぇんだ」

ズボンのポケットに両手を突っ込み、龍太郎はぼやく。

とはいえ、この夏休みは格闘馬鹿の龍太郎にとって有意義ともいえた。

肝試し騒動、校舎半壊事件と、限りなく実戦に近い経験をする事で、龍太郎の武道家としての技量は上達しつつある。

彼の周りにいる教師や生徒があまりに強すぎる為に目立たないが、入学当初に比べると、龍太郎の武道家としての腕前は大きく上がっていた。