後の天神学園史に『校舎半壊事件』と記される事になる夏休みの騒動から三日が過ぎた。

「先生、出来たぜ~…」

掠れた声で、汗だくになって、丹下 龍太郎(たんげ りゅうたろう)は席を立つ。

「うむ、見せてみろ」

教壇で頬杖をつきつつ小難しい歴史書を読んでいたチャイナドレス姿の美女が、顔を上げた。

李 龍娘(り ろんにゃん)。

天神学園の生徒指導である。

彼女の温情によって『校舎半壊事件』の犯人たる生徒達は、極めて軽い処分に終わった。

その処分というのが、レポート用紙20枚に及ぶ反省文。

龍太郎もまた、ようやくその反省文を書き上げたのである。