キミを想う。




冷房もない資料室は蒸し暑く、窓を開けていても生ぬるい風しか入ってこない。


額から汗が流れている瀬野くんに声をかける。



「は、花火大会…」


「ん?」


動かしていた手を止めて、隣にいる私を見つめる。



「ほ、本当にいいの?」


もしかしたら、加穂さんと一緒に行く約束してたんじゃないのかな?



「うん。俺、花火大会好きだよ。小さい頃は毎年アニキと行ってたし」


「アニキ…ってお兄さんいるんだね。仲良しなの?」


「うーん…今はそんなに」


苦笑いを浮かべる瀬野くんに引っ掛かる。



「…何かあったの?」


自分でも驚いた。


何でこんなことを聞いているのか。


でも勝手に口をついて出てきた。



「…いや、何もないよ」


そう言って笑って、また作業に戻った。


お兄さんと何かあったのかな?



隣に立つ瀬野くんを一瞬見つめるが、瀬野くんが黙々と作業をするので、結局予鈴のチャイムが鳴るまで会話をすることはなかった。