パシれメロス【短編】

雄大なる大河の長江や命の川ナイルなどを思わせるこの濁り切った流れの中では目も開けていられない。

水没し流れに揉まれたら一瞬で上下左右も分からなくなった。

体を裂くような奔流の中で見えない水面を求めてやみくもにもがく。

何もかも不確かな中で左手が掴んでいるヤキソバパン入りのレジ袋だけが確かな現実だった。

ヤバい、死ぬ。

最初に沈んでから一度も水面から顔を出せず息はもう限界が近い。

……メロスは死んでもヤキソバパンから手を離しませんでした。か……

冗談じゃない!

こんな所で死んでたまるか!

僕はまだこの先も青春を謳歌したいし、脳内でなく現実に彼女をつくってエロい事もしたい。

何より佐藤君にヤキソバパンを届けなければ!

うおおおぉぉ!!

萌え上がれ僕のコスモ!

僕は最後の力を振り絞ってあがいた。