『廊下は走ってはイケマセン』

これはどこの学校でも共通の決まりだろう。

僕らの高校もそうなのだが例外的に昼休みだけは走ってもいい事になっている。(正しくは黙認されている)

昼休みの廊下。それを一言で表現するならばほとんどの人がこう言うはずだ。

『サーキット』と。

購買部での買い物は当然早い者勝ちで、商品の人気はいつだって偏っているものだ。

だから男女も学年も問わず、誰もが授業が終わった瞬間に全力のBダッシュで購買部を目指す。

それゆえに毎日昼には廊下はサーキットと化し、万が一コケる者が出ようものならたちまち数人から十数人を巻き込む大事故となる。

先ほどの僕と佐藤君の余裕すら感じられる会話は、僕が昼休みにおける歴戦の猛者だからだ。

廊下へ踏み出した僕は『ドンッ』という低い踏み出し音を響かせて、一歩目からほぼトップスピードで購買部を目指し走りだした。