漆黒の瞳

 



「授業始めるぞー」


生物の教員の間延びした声に、私は窓の外に向けていた目を教壇に立つ白髪混じりの男性に向けた。



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今日はバイトがある。校則で禁止されてはいないが、特別な理由がない限り許可されないそれを、私はしっかりと許可を得て行っている。

バイト先は小さな個人経営の喫茶店だ。


「あぁ、来たか。着替えたら注文頼む」


店の裏口から入ると、喫茶店の店長の婚約者である鈴さんと出くわした。綺麗な長い黒髪を高い位置で結い上げた彼女は、優しい笑顔をこちらへむけてくれる。


「はい」


返事をして、店へと続く扉から出ていく鈴さんを見送り、手早く着替えを済ませる。肩にかかる邪魔な髪の毛は黒い髪ゴムで一つに結い、制服の乱れがないかを確認してから店に入った。

注文をとるのが私の主な仕事であり、時折カップや皿を洗う手伝いはするものの、それ以外は滅多にすることはない。

珈琲や紅茶を淹れるのは店主である謙治さんの仕事で、会計は鈴さんの仕事だ。


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