上司の言葉は冷酷無慈悲に聞こえるが、そう思ったものは一人もいなかった。


その場を見ている観客たちすらも。


それが、当たり前だった。


スラムは人だとは思われていないからだ。

パンッ

パンッパンッ


ピストルの音が建物の中から聞こえてくる。

「皆様!危険ですのでお下がりください!」


先程命令した上司が観客の前でそう叫んだ。

「さぁ、お早―――」


パリーン


中々解散しない観客たちに、上司がもう一度、言おうとした時、窓が割れる音がした。


「な、何事だ!?」


上司は割れた窓を見上げながら、トランシーバーで部下に叫んだ。


『け……警部……』


「早く言え!何事だ!」


『……ま…ガガ……ディ……逃………ガガガガ……ブチッ』


「!?」


言葉は聞き取れないまま、通信は切れてしまった。


「(何が起こっている!?)」


上司はトランシーバーを握りしめながら、心の中でそう叫んだ。