「え、と……怒って、たり…する…?」


何も言わない私に男の人は恐る恐る聞いていた。


「あ…いえ、大丈夫。じゃ、急ぐから」


私は顔が見えないように下を向きながら立ち上がり、男の人から離れようとした。


「君!」


そんな私の手首を掴んで男の人はそう叫んだ。


「…君、ブラッディクロスだよね?」


「!!」


その男の言葉に私は顔を上げて、男の人の顔をみた。


やはり歳は変わらないだろうが意外にもイケメンだった。


………いやいや、そうじゃなくて。


「……」


私は何も言わずにただ男の人を睨んでいた。

「ね、その盗んだベール…俺にくれない?」

「は!?」


笑顔で聞いてくる男に私は訳がわからなかった。


「あんた馬鹿?私は怪盗で、これは私が盗んだもので私のものなの」


「知ってる。君はそれを盗んでどうするつもりなの?」


「……何がいいたいの?」


男の遠回しな言い方に私はイラつき、そう聞くと男は再び笑った。